文学ファイター

I have a dream.

眠る瞬間

普通に考えたら、眠る瞬間に関して人間が気がつけるわけがない。だって、眠る瞬間に「今、眠ったわ!」っていう時には既に夢の中なのだから。

でも、本当にそうなんだろうか?世界中探したら、実は一人くらい居るんじゃないだろうか。眠る瞬間に気がつくことが出来る特殊能力者「ドリーマー」が。例えば私とか。

というわけで、今まで誰にも話したことがないけど、実は私は眠る瞬間が分かります。特殊能力者「ドリーマー」です。はいはい、どうせ信じていないんでしょう。よかろう。私が眠る瞬間に気がつけるようになった時のことを話そう。

ある晩、いつものようにベッドの上で横になっていました。もちろん眠るためです。で、ぼーっとしていて、頭の中でいろいろ空想していたら、ふと「あ、この空想、このまま夢になるわ!」って気が付きました。

でも、私以外の人でも、例えば眠る前のぼーっとしている時に、気がついたら怖い空想とかしてしまってて、ふと「あ、この怖い空想がこのまま夢になる!」って気がついて、慌てて目を覚ます、ってことが、長い人生で一度や二度くらいはあるでしょ?

私も、本当に偶然、たまたま夢に気がついただけで、「あぁ、これは、前にも経験したことがある、たまたまこの空想が夢になる、って気がつくやつだ」って思ったのよ。で、夢に繋がる空想って、「あ、これ夢になる!」って心の中で思った瞬間、目が覚めちゃうんだよね。

ここまでは、皆とは言わないまでも、そこそこの人が経験あると思う。で、ここからが地獄の始まりなんだけど、その日、二度目に寝付けそうになった時も「あ、この空想、夢になる」って気づけたのよ。三度目に寝付けそうになった時も「あ、この空想、夢になる」って気づけたのよ。で、さっきも言ったけど、夢に繋がる空想って「あ、夢になる」って心の中で気がついた途端、夢を私に見せる担当の人、通称「夢子さん」女子大出身、巨乳の子が「しまった、バレた」って言って夢を私に見させるのを中止するのよ。いや、頑張ってその日はなんとか寝たけどね。

で、その日からなんか知らないけど、毎晩夢になる空想に気がつくことが出来るようになったのよ。夢の始まりって、ぼーっと空想してたことが、突然暴走を始めて、そのまま夢になるんだけど、もう毎晩、暴走が始まると「うわ、なんで突然そこで走るの?」とか「なんで突然子供が出てくるの?」って暴走に気付いて、心の中でツッコミを入れちゃうのよ。夢子さんに向かって。で、夢子さんシャイだから、ツッコミを入れるとビビって私に夢を見せるのを中止するのよ。よって私はずーっと寝不足だったね。毎晩、一番最初の夢を見る瞬間だけに気づくんじゃなくて、二度目に寝付けそうなとき、三度目に寝付けそうなとき、四度目に寝付けそうなとき、すべての夢の始まりに気がついたからね。寝たいのに。もう、地獄だよね。ずっと寝不足。

「ツッコミいれるのをやめれば良くない?」って思うと思うんだけど、このツッコミって、心の中で思ったら、もう夢子さんがビビって私に夢を見させるのを中止するから、例えば「え、なんでそこでリスが出てくるの?あ、ダメだ、ツッコんじゃいけない」って思っただけで、もう目が覚めるのよ。

だから、正直、この時は夢子さんを心から応援していたからね。「頑張れ、夢子さん!頑張って私にバレないように夢を見させるんだ!」って。それでも気がついちゃったけど。

ただ、この能力、単純に「夢を見る瞬間」に気がつくだけで、明晰夢を見れるわけじゃないのよ。明晰夢って、夢の中で「あ、これ夢だ」って気づくことなんだけど、私、単純に夢に入る瞬間に気づけるだけで、夢の中で夢に気づける能力は持っていなかった。どうせなら明晰夢をみる能力のほうが欲しかった。夢を見る瞬間に気がつける能力を得た私が手に入れたものは、圧倒的寝不足。ただそれだけ。

でも、私が眠る瞬間に気がつけるようになったって事は、逆に言えば私以外にも眠る瞬間に気づく能力がある人がいるはずってことだよね。だって、世界中で私だけが眠る瞬間に気がつける人間って逆にありえないと思う。だから、ここで記事にしておけば、例えば誰かが「しまった、なんか知らんが眠る瞬間に気づける能力を得てしまった。その結果、めっちゃ寝不足だわ」っていう人が、困ってネットで検索して私のこの記事にたどり着いたりするだろう。そう、例えばあなたとか。

私もあなたと同様、眠る瞬間に気づける能力者「ドリーマー」だよ。今、あなたはめっちゃ寝不足なことだろう。大丈夫、そのうち慣れて眠れるようになるから。え?「早く普通に眠れるようになりたい?」。無理です。慣れです。慣れで眠れるようになってください。ちなみに、私はこの能力を手に入れた後、なんとか普通に眠れるようになるまで、二カ月くらいかかりました。

まあ、私達、能力者「ドリーマー」の苦労なんて、一般人には知るよしもないでしょう。ともに「ドリーマー」としてこの苦労を乗り越えて行きましょう。――などと言うと思ったか?このタコ助野郎が!!

私が夢に入る瞬間に気づけるようになったのは、もう何年前のことだと思ってるんだよ。私はもう、貴様よりも遥か「高み」にいる。そう、私は「カリスマドリーマー」だ。

あなたは所詮普通の「ドリーマー」なので、まだ夢子さんが「空想を突然暴走させる能力を持つ」だけの存在と思っているのだ。甘いなぁ。夢子さんの恐ろしさが分かっていないなぁ。

あなたがぼーっと空想している、その空想の世界。その中でも、夢に繋がる空想に関しては、あなたがいつの間にかほんわかと空想しているものではなく、夢子さんが作成した空想の世界、つまり、夢子さんがはった罠の世界、夢子さんのテリトリーの世界だよ。

つまり、夢子さんは「あなたが、ぼーっと空想している世界に、空想が突然勝手に動き出す、『暴走』という名の弾丸を放つ」のではなく、「あなたが、夢子さんが作成した夢につなげるための空想の世界、すなわち『罠』にはまり、それに気が付かずあなたが空想の世界で泳いでいる時に、夢子さんは仕上げとして『暴走』という名の弾丸を放つ」のだ。そう、夢子さんはプロのハンターなのだ。女子大出身なのに。巨乳なのに。

ちなみに、私が夢子さんの罠、夢子さんのテリトリーの存在に気がつけるようになったのも、なぜか分からないけど突然気がつけるようになりました。例えば「あの親戚のおじさんとは昔から気が合わないんだよなぁ……。あのおじさん、確か……名前は……こんなおっさん、私の親戚にいないわ!!」とか「ああ、あの景色なつかしいな。昔よく家族で行ったな。ここは確か京都……じゃねぇ!こんなとこ行ったことねぇ!」とか。ちなみに、それまで、なんとか慣れで眠れるようになっていたのに、夢子さんのテリトリーに気がつけるようになったことで、ここからまたしばらく寝不足になりました。私、別に眠る瞬間に気が付きたいわけじゃないんだ。ただ、普通に寝たいんだ。

でも、全世界で私だけが「カリスマドリーマー」の能力を持っているとは考えにくいので、ドリーマーよりは数が少ないと思うけど、私以外にもカリスマドリーマーの人がいることだろう。例えば、あなたとか。私もあなたと同じカリスマドリーマーです。ともに、素人「ドリーマー」を導いていきましょう。――などと言うと思ったか?このイカ助野郎が!!

私がカリスマドリーマーになったのはもう何年前のことだと思ってるんだよ。私はすでに、ドリーマー界の頂点「ゴッドドリーマー」として君臨しているんだよ。カリスマごときが私と同等だと勘違いしてもらっちゃ困るよ。

あなたは所詮、たかが「カリスマドリーマー」なので、夢子さんの真の恐ろしさに気がついていない。そもそもなぜ、私以外のほとんどの人が夢を見る瞬間に気がつけ無いのか。夢子さんがはった罠に気がつけ無いのか。あなたは、夢子さんが作成した「夢につなげるための空想」、すなわち「罠」がどのようにはられるかというと、あなたに気が付かれないように、いつの間にかその空想をしてしまっているようにと、じわじわとあなたにその空想を強制している、と推測しているだろう。

そうではない。夢子さんは大胆にも、突然にあなたにその「夢に繋がるための空想」を強制しているのだ。それなのに、あなたも、あなた以外の皆もほとんど誰も夢子さんがはった罠に気がつけない。なぜなら夢子さんはあなたに「夢に繋がるための空想」を強制すると同時に、あなたの記憶をあたかも「その夢に繋がるための空想についてあなたがずっと考えていたかのように作り変える」からだ。夢子さんはあなたの記憶を書き換えているのだ。あなたを夢の世界に突き落とすために。

記憶を書きかえる、って簡単に言ってるけど、これ冷静に考えると結構凄いぜ?私がさっき夢に気がついた時の例として『「あの親戚のおじさんとは昔から気が合わないんだよなぁ……。あのおじさん、確か……名前は……こんなおっさん、私の親戚にいないわ!!」とか「ああ、あの景色なつかしいな。昔よく家族で行ったな。ここは確か京都……じゃねぇ!こんなとこ行ったことねぇ!」とか』っていう例を出したけど、つまり夢子さんが本気を出せば、いるはずのない親戚のおじさんを記憶の中に偽造できるし、「懐かしい」という感情すら偽造できるのだ。

で、この「記憶を書き換える」というSFチックなことが、毎晩世界中の全人類に起こっているのだ。これを見ているあなたにも起こっているのだ。その証拠に、私以外のほとんど誰も、眠る瞬間に気がつけていない。つまり、夢子さんは、現在はたまたま記憶の書き換えの能力を「夢を見せるため」だけに、使用しているけど、全世界の夢子さんが本気を出して、人類の記憶をすべて書き換えたら、それに気がつけるのは「ゴッドドリーマー」の能力をもつ私くらい、ということだ。分かるか?この恐ろしさが!私こそ、全人類の希望の星。私だけが真実の記憶を、真実の世界を知る者。

ちなみに、もし本当に全人類の記憶を書き換えられても、私は世界のために立ち上がったりしないのだ。だって、私一人だけが「え?昨日まで女子大生は水着で外出するのが義務だったよ?」って訴えても、ただのキチガイとしか扱われないのだから。そう、私がここでこの記事を書いたのは、もし全世界の夢子さんが人類に反乱を起こした時に対抗するための戦士を育てるためなのだ。皆さんにはぜひ、「眠る瞬間に気づく能力」を身につけてほしい。

ただし、私が「眠る瞬間に気づく能力」を手に入れるために、何か特別なことをしたかというと、何も特別なことをしていない。「『夢子さんが記憶を書き換えている』ことに気がつけるようになったのはどうやって?」って思うかもしれないけど、なんか良くわからないけど突然気がつけるようになった。「なんで記憶を書き換えられているのにソレに気がつけるの?気がつけるわけ無いじゃん」って思うかもしれないけど、仕方ないじゃん!私だって良くわからないけど気がつけるんだから!!

別に特殊な運動をしているわけでもないし、瞑想をしているわけでもないし、特別な食事を食べているわけでもないし、身体に謎の傷が残されているわけでもないし、小さい頃狐憑きだった、ってこともないし、宇宙人に連れ去られた記憶があるわけでもない。

しいていうなら、私が友達がおらず、彼女もおらず、実家ぐらしの30代男性ということだ。つまり、「眠る瞬間」に気づく能力を手に入れるためには、あなたも友達と縁を切り、彼女と別れ、実家に暮らし、30代の男性になれば良いのだと思う。ともに眠る瞬間に気づく能力を手に入れよう。そして世界を救おう。

ちなみに、夢子さんに反乱の意思がない場合は、この能力を手に入れると、ただの、ものすごい寝不足になります。

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