文学ファイター

もう坊主にしようかな。

髪を切りたい

連休ですね。髪が伸びてきたので、この連休中に髪を切りたい。私はいつも髪を美容院で切っている。子供の頃は普通の床屋で切っていたけど確か大学一年生の頃、姉に「大学生だしそろそろ美容院で髪切りなよ」と言われて、姉が行っている美容院に連れて行かれた。その後、家族みんなその美容院を使うようになった。それ以来、現在に至るまでその美容院に通っている。

しかし、美容院を変えようと思う。あの変化の苦手な私が!美容院を!変える!

なぜなら、その美容院に行き始めた頃は確かにその美容院の近所に住んでたけど、その後、3つ離れた駅に引っ越して早7年くらい。姉も結婚で家を離れた。弟も彼女と同棲するために家を離れた。父親も母親も、確かもうその美容院を使ってなかったと思う。だって駅で3つも離れてるんだもの。

つまり、私にもうその美容院を使い続ける意味はないんだ。だって髪に切り行く度に駅3つ分電車に乗るんだぜ?なんて無駄なんだ。むしろ、引越し後も七年くらい通い続けてた私が凄いわ。

あと、これは美容院を変える主たる要因ではないんだけど、毎回美容院に予約入れるときに「ご指名は?」って聞かれて「誰でもいいです」って答えてたら通い始めの頃は女の人に切ってもらえてたのに、何回か人が変わって、最近は最終的に同じ男の人で落ち着いてしまった。どうせなら女の子に切って欲しいわ。いや、これは主たる要因ではないんだけど。

大体、会社では仕事ができなさすぎて、女の人にクズを見る目で見られてるから、美容院って女の人に人間として扱われる数少ないチャンスなのに、その数少ないチャンスで男に髪切られるってバカなの?何なの?いや、これは本当に主たる要因ではないんだけど。

で、近所の美容院をGoogle Mapでググったら結構たくさんあって、ざっとその美容院のウェブサイトを確認したんだけど、怖いね、美容院。おしゃれ感ほとばしってるじゃん。

いつから美容院は店長をアートディレクターって呼ぶようになったの?皆、アートをディレクションして欲しくて美容院行っているの?皆、南仏の海岸都市を思わせる大人の隠れ家サロンで髪を切りたいの?皆、髪を切る度に新しい自分に出会ってるの?スタッフ皆茶髪だし。男はおしゃれな帽子かぶってるし。ちょび髭生えてるし。リア充感あふれ出てるし。

もうちょっと普通でいいんだよ。そこまでオシャレ感弾けなくて良いんだよ。と思うんだけど、逆に個人がやってる美容院のダサすぎるウェブサイトもなんか違うんだよ。スタッフ紹介ページが404 NOT FOUNDだし。なんなの?スタッフいないの?私はアットホームも求めていないんだ。人間のぬくもりなんて求めていないんだ。キッズルームもいらないんだ。

もっとドライでいいんだ。金だけで結ばれた関係で良いんだ。あなたが死んでも私は悲しまない。私が死んでもあなたは悲しまない。美容院内での会話も最低限で良いんだ。遠すぎる人間関係、遠すぎる間合いくらいで丁度いいんだ。サムライの国の美容院なんだから、間合いをつめたら死ぬことを知ってほしいんだ。殺るか殺られるか、撃つか撃たれるか、刺すか刺されるか――。この不自然なほどの長い沈黙に、君は耐えられるか?くらいでいいんだ。まぁ、斬るか斬られるかって聞かれると、斬られるんですけどね。髪を。

単純に髪を切りたいだけで、そろそろ床屋は卒業して美容院行きたいけど、コミュ症だからそこまでオシャレ感溢れてる店は怖いっていう私みたいな人は他にも絶対いるはずなんだよね。

なんだろう。私達コミュ症のことを想像しにくいなら、殺し屋をイメージして欲しい。まず、殺し屋はオシャレ感あふれる美容院に行くか?行かないよ。殺し屋だもの。南フランスの海岸都市を思わせる大人の隠れ家サロンで髪を切りたいとか思わないよ。かと行って、床屋に行くか?っていうと、床屋にも行かないよ。殺し屋だもの。あまり目立たない普通の美容院でそこそこの髪型にされ、目立たず生きていくよ。殺し屋だもの。

髪を切られてる間も、美容師さんと楽しい会話とかしないよ。殺し屋だもの。会話は最低限だよ。殺し屋だもの。だから、私達殺し屋のニーズに答えるために、美容師さんも長い沈黙に耐えて欲しい。むしろ、沈黙とか全然平気。静寂は友。美容院のウェブサイトのキャッチフレーズは「感情など、とうに捨てた――」で行っていただきたい。

は?美容院のキャッチフレーズに「感情など、とうに捨てた――」は意味が分からなさすぎる?突然南フランスの海岸の話をしだすお前に言われたくないわ。大体、美容院と南フランスの海岸は一ミリも関係ないけど、「感情など、とうに捨てた――」は、「あぁ、きっと感情などとうに捨てた美容師さんに髪を切ってもらえるんだな」って分かるじゃん。むしろ、こっちのほうがちゃんとしたキャッチフレーズだわ。

あと、私達コミュ症としては自分に自信がない。おしゃれにも自信がない。だから、どんなにダサい人間が来ても、どんなバケモノが来ても、ノーリアクションで受け入れて欲しい。例えば、私、めっちゃ猫背なんだよね。油断するとすぐ猫背になる。あと、これは良く「猫背になってるよ」って言われてる皆に言っておきたいんだけど、鏡で自分の姿を見るときは無意識に背筋伸ばしちゃってるだけで、鏡の前以外は、あなたはめっちゃ猫背になってるから気をつけろ。だから、どんなに猫背でも。普通に考えてありえないくらい猫背でもノーリアクションで受け入れて欲しい。他にも、我々コミュ症には色々な事情がある。ニキビがひどくても受け入れて欲しいし、体毛が濃くても受け入れて欲しい。

あと、たくさんのオシャレ感あふれる美容院のウェブサイトを見ていて思ったんだけど、皆、自分で自分のハードルを上げている。どういうことかというと、大体美容院のサイトを見ると髪型の写真がバンってでてるのよ。で、そのモデルは皆、異様に可愛かったり、異様に格好良かったりするのよ。だってモデルだもの。で、スタイリスト紹介の写真に行くと、みんな普通なのよ。だって一般人だもの。むしろ、めっちゃ可愛いかったり格好良かったりした人の写真の後に見るから、ブサイクやブスに見える。そうなのよ。自分で勝手にハードルをあげて、自分で勝手に失敗してるのよ。

だから、まず髪型の写真はいらない。髪型のページには一言「いい感じに切ります」でいいよ。殺し屋は髪型にこだわりとかないし。いい感じに切って欲しいよ。

あと、スタイリストの写真は、むしろ軽くダサい服を着ていて欲しいよ。おしゃれな人はコミュ症の敵だよ。「本気を出せば3倍可愛いですが、私は常にやる気がないので、ダサいです」って文章で書いておいていただければ、たとえ本当に可愛くなくてもこっちは勝手に「きっと本気出せば可愛いんだろうな」って思うよ。

あと、経験25年とか、そんな一流の人に切ってほしくない。なぜなら私はそんなにだいそれた人間じゃないから。正直初心者でいい。1年目でも構わない。1年目〜7年目。この経験値が丁度いい。だから、カットは正直ちょっとくらい下手でも良い。美容室の名前もそれにあわせよう。ひよこクラブでいいわ。初心者の美容師がやってる目立たない美容室「ひよこクラブ」。これでいいわ。ついでに言えば、女の美容師はおっぱいが大きくあってほしい。

目立たない場所に、殺し屋たちが通う美容室があった――。感情など、とうに捨てた。バケモノも受け入れよう。いい感じに切ろう。常にダサい。きっと可愛い。切るのは下手だ。おっぱいは大きい。……美容室『ひよこクラブ』 ――きっとこの夏は誰も忘れられない夏になる。2016.7.26 映画公開予定。「あなたが死んでも私は悲しまない。私が死んでもあなたは悲しまない」

これだよ。私達殺し屋はこれを求めてるんだよ。そりゃ映画化も決定するよ。これが望まれてる美容室だよ。個性だよ。それに比べてそこら辺のおしゃれ美容室は何だ。みんな似たようなハイセンスを売りにして、似たようなおしゃれなおっさんとおしゃれなお姉さんがおしゃれな茶髪でおしゃれおしゃれしやがって。

お前らはただのおしゃれコピーなんだよ。おしゃれな女子大生が全員ゆるふわ茶髪でまるでコピーなのはおまえらのせいだよ。おまえらはおしゃれじゃないと怖いんだ。むしろおしゃれである事で目立たなくいたいんだ。

大体美容院に「おしゃれ過ぎない美容院でダサすぎない程度に髪を切って欲しい」っていうニーズが確実にあるのは誰でもわかるのに、どの美容院もそのポジションを狙わない。なぜなら、周りは皆、オシャレ感を満載した美容院だからだ。だから自分の美容院もオシャレ感満載を目指すのだ。皆と一緒で安心したいのだ。王様が裸だと言うのが怖いのだ。ニーズはあるのに。殺し屋はいるのに。

所詮お前らは感情はあるし、バケモノからは逃げるし、最高のカットはするし、常におしゃれだし、普通の容姿だし、切るのは上手いし、おっぱいは小さいのだ。おしゃれを言い訳にしてそこら辺にあるようなハイセンスな美容室を経営し、おしゃれを言い訳にしてそこら辺にあるようなハイセンスなカットをし、おしゃれを言い訳にして没個性な美容室経営に満足して死ねばいい。

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