文学ファイター

今日、超攻撃的犬の散歩してたら、あやうく道に迷いそうになった。

うーん……の話

うーん……の話。

知り合いのAはヒドい奴だ、という話を皆さんで話されていました。で「お前はどう思う?」って聞かれたんですよ。私に。で、「うーん……」って答えてしばらく悩んでたら「あぁ、ということは、お前もヒドい奴だと思ってるんだ」と言われました。

いいえ。違います。私の「うーん……」は特に何の裏の意味もないそのままの「うーん……」で、今まさに考えて答えを出そうとしていました。確かにAがヒドい奴か否かは微妙な所でした。微妙なところでしたが、むしろ私は「いや、ヒドい奴では無いのではないか」という結論に傾きかけていました。

なのに、「うーん……」と言っただけで私の何も無い裏の意味を勝手に探られ、私の意図していない意味を勝手に付加されて、どうなってんだこの野郎。

確かに日本語は奥が深いので、普通の会話でもまったく関係の無い言葉なのになんらかの意味を持つ的な文化があるけども。そしてあれでしょ?この文章を読んでいる皆さんも実は奥ゆかしき人なんでしょ?「本音を言わない表向きの自分」と「本音を言う裏向きの自分」を持ってるんでしょ?「真の自分の姿は家族しか知らない」とかあるんでしょ?

で、確かに奥ゆかしき人が「うーん……」っていう奥ゆかしき言葉を発したならば、裏の意味を持つこともあるかもしれないけども、皆私がどういう人間かを忘れている。私は奥ゆかしくない。つまり、私は裏の顔とか無い。真の隠された自分とか無い。

つまり、私の言葉には何もメタ情報は付加されない。私の発する「可愛いね」という言葉には「可愛い!大好き!彼女にしたい!」という意味もなければ、「はいはい、カワイイカワイイ。とりあえず褒めとけ」的な意味もない。「可愛い事象」に対して「可愛い」という感想を述べただけで、それ以上でもそれ以下でもない。

私の発する「面倒くさい」と言う言葉には「この仕事、面倒臭いですね。もう皆で帰って、続きは明日にしません?」という意味もなければ「分かっています。皆さんこの仕事が面倒臭いというのは。私も面倒くさいです。でも頑張ってやってます。なので皆さんも頑張りましょう」という意味もない。「面倒くさい事象」に対して「面倒くさい」という感想を述べただけで、それ以上でもそれ以下でもない。

つまり、私は一次元的な人間なんですよ。底が浅いんですよ。深みが無いんですよ。そんな人間ですよ。それが私ですよ。秘密が無い人間とは言いませんが、秘密に関して聞かれたら「それは秘密です」と言って語ることを断るけども、秘密の有無自体をうやむやにする様な深みは無いわけですよ。

なのに貴様等二次元人間どものせいで、ややこしいことになってますよ。いや、それどころかあなた本当は二次元どころじゃないでしょ?本音をどの程度露わにするかの段階があるでしょ?「友達に見せる第一形態」「真の友達だけに見せる第二形態」「好きな人だけに見せる第三形態」「家族だけに見せる第四形態」とか、それくらい深いんでしょ?四次元か?おまえ四次元ポケットか?「だが、究極の最終形態はまだ誰にも見せたことが無い」的な人間なんでしょ?お前はラスボスか?

おそらく、日本人の多くは多次元人間なんですよ。奥ゆかしいんですよ。奥ゆかしすぎるんですよ。その文化は日本語にも現れていますよ。

京都では「お茶漬けでもどうですか?」ってお客さんに聞くのは、お客さんに対して「すいません。この後用があるのでもうそろそろお帰りください」的な意味なんですよ。つまり、これに対する正しい答えは「いえ、結構です。あ、すいませんこんな時間まで。そろそろ帰ります」が正しいんですよ。知ってました?

私がこの文化に始めて出会ったのは多分小学3年生くらいですよ。しかも場所は横浜でしたよ。初めて行った友達の家で「ぶぶ漬け食べる?」って聞かれて訳が分からなかったですね。「ぶぶ漬けって何?」って聞いたら「お茶漬けのことだよ」って答えられて、なんでお茶漬けを勧めるのか良く分からないけど、勧められて断るのも失礼だろう、と小学三年生なりに頑張って考えて「食べます」って応えちゃったよ!ミッション失敗だよ!その後何か、何も具の無い、お茶だけが入ったお茶漬け食べたよ!そんな文化、横浜に住む小学三年生は知らないよ!その後なんかその友達に避けられるようになったよ!いや、場所が京都なら私の無知が責められるべきだけど、横浜じゃん!語尾が「じゃん」の横浜じゃん!もうこの経験をしちゃったから、ちょっと京都の人がいたら身構えちゃうくらいのトラウマだよ!京都の知り合いとかいないけどさ!

他にも「月が綺麗ですね」は「あなたの事が好きです」っていう意味があるらしいよ。普通に女性と道を歩いていて、普通にふと夜空を見上げると月が綺麗だったから「月が綺麗だね」って行ったら微妙な顔されたよ!その後、「月が綺麗」にそういう意味があると知ってもう赤っ恥だよ!私、何か悪いことした?してないよね?してないのに恥かかされたよ!どう責任とってくれるんだよJapanese!!

じゃあ逆に聞くけど、京都人はお茶漬けをお客さんに食べてほしいときはどうするんだ?「そういう意味じゃないけどお茶漬け食べる?」って聞くのか?月が綺麗な時は「そういう意味じゃないけど月が綺麗だね」っていうのか?

これで逆に相手がそのメタ情報を知らなかったときはさらにややこしいことになるよ!

「『そういう意味じゃないけどお茶漬け食べる?』……?お茶漬けを食べるという意味ではないが、お茶漬けを食べますか?と聞いていることになる……。この意図は……つまり……。導き出される答えは一つ。『助けて、一休さん』だ!」

「『そういう意味じゃないけど月が綺麗だね』?月が綺麗という意味ではないが、月が綺麗?……よく意味は分からないけど、とりあえずアイマイに笑って誤魔化そう!」

ほらもう面倒くさい。面倒くさいよね?この面倒くさい日本語のひとつが『「うーん……」は回答しにくい回答を意図している』の意ですよ!あれか?日本人は「うーん……」と悩んではダメか?悩むの禁止か?質問された途端に回答しないといけないのか?悩むときは「そういう意味じゃないけどうーん……」っていうのか?

っていうか「『そういう意味じゃない』わけじゃ無い」じゃん。むしろ、そういう意味じゃん。ありのままの意味だよ!

「ありのままの意味だけどお茶漬け食べる?」「ありのままの意味だけど月が綺麗だね」「ありのままのうーん……」

ほらもう面倒くさい。面倒くささマックス。この面倒くささの原因は。お前だ。多次元人間であるお前に原因がある。もう面倒くさいから、今日から一次元で生きろ。日本文化をぶっ壊せ。

「社長!面倒くさいんで今日適当に仕事します!」「え、A君?あいつの事が好きなの?センス最悪だね。死ねばいいと思う」「勉強する意味が分からないから、勉強しません!」「おまえってブリっ子だよね。見え透いていて気持ち悪い」「お前は俺が見てきた中で一番のバカだと思う」

ダメだ!一次元人間だけだと社会が成り立たない!っていうかコミュニケーション難しいよ!面倒くさいよ!そりゃこんな社会だから私だってコミュニケーションがうまく取れない人間になるよ!そう考えると、これ読んでるあんた凄いよ!ものすごいバランス感覚で日本語というツールを使ってコミュニケーション取れてるよ!『裏の自分』と『表の自分』を絶妙な感覚で使い分けてるよ!「誰にどの程度自分の本音を語るべきか」の計算が完璧だよ!天才だよ!マジ天才だよ!いやこれ別に深い意味が無く褒めてるからね?本当だよ?ありのままの天才だよ?ほらもうあんた、私のありもしない裏の意図を読み取ろうとしてるよ!日本語本当面倒くさいよ!

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