小説シンガー

人生でみかじめ料なんて払ったことが無い。

みかじめ料

天国へ行く途中、熊に出会った。

熊は言った。
「おいおい、お嬢ちゃん。この道を通るなら、みかじめ料を払いな」

みかじめ料。聞いたことがある。時は昭和時代。ある特定の場所ごとに支配者がおり、その支配者にお金を渡さなければ、その場所を通ることができず、無理して通ろうとすると、支配者に滅多めったのぼっこぼっこにされたと言う……と、死んだおばあちゃんが言っていた。昨今は天国ヘ行くにも料金が必要になったとは。嫌な世の中になったものだ。

「申し訳ありません、熊さん。ワタクシ、お金を持っておりません」
「ふっ。金を持っていないとなると、体で払ってもらうしかないな。悪く思うな。俺だって、やりたくてこんなことをしているんじゃないんだからな」
そう言って、熊はニタリと笑った。

天国へ行く途中、人間に出会った。

人間は言った。
「ネコさん。ごきげんよう。この道は、みかじめ料を払ってもらわないと通ることができないの」

にゃ、にゃんだってー!?と思った。まさか、天国へいくのに鮭の切り身がいるなんて思ってもいなかった。

「すまないにゃー。今、鮭の切り身は持っていないにゃ−」
「鮭の切り身?あぁ、きっと文化が違うのね。まぁ、いいわ。みかじめ料を払えないのなら、体で払ってもらうしかないわね」
そう言って人間はニタリと笑った。
「ごめんなさいね。私も、熊に命令されてやっていることなのよ」

天国へ行く途中、ネコに出会った。

ネコは言った。
「こんにちは、チョウチョさん。この道はみかじめ料を払わなければ通すことはできないにゃ−」

なんですと?昨今の天国は行くのに花の蜜が必要なのか?

「悪いですけども、今、持ち合わせが無いんですけど?」
「にゃにぃ?ならば体で払ってもらうしかないにゃ。悪く思うにゃよ?こっちだって、人間に命令されてこんなことをやっているんだにゃ。人間は熊に。熊はカエルに。カエルはネズミに。ネズミはブタに。ブタはパンダにパンダは……ともかく、上がつっかえているんだにゃ。誰かがみかじめ料を払ってくれなきゃ、誰も天国へいけないじゃないかにゃ」

──天国へ行く途中、じいさんに出会った。

じいさんは言った。
「こんにちは、魔王さん。この道を通るにはみかじめ料が必要ですよ」

おれはびびったね。天国ヘ行くのに人間の魂が必要だなんて思ってもいなかったから。
「時代は変わったもんだな。で、どれくらいの人間の魂が必要なんだ?」
「そうさな。上がつっかえているもんで。ざっと三千人分もらおうか」
「三千人分!?そんなにか?ひぇーっ!!魔王からそんなにぶんどるとは!あんた以外にゃできない芸当だな」

そう言って俺が三千人分の魂を支払うと、どこからかわらわらと熊やらネズミやらパンダやらキリンやらゴリラやらアリンコやらバッタやら人間やらが現れて、皆して「これでやっと天国へいける!」と歓声をあげやがった。

「一体、何が起こったっていうんだ?じいさん」
「さあてね?わしが人間界へ降りている間、どうやらシステムが変わったらしい」
そう言って、じいさんは背中にある大きな翼を広げた。

「わしもやっと天国へ帰れる」

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