小説シンガー

正直者の詐欺師です。

誠心誠意、詐欺行為をさせていただきます

はじめまして、詐欺師です。今日はお客さまをダマすためにやって参りました。

いえいえ、冗談ではありません。ほら、私の名刺を御覧ください。「詐欺会社・ゴーストカンパニー」と書かれているでしょう。れっきとした営利企業なのです。いえいえ、どっきりでもありません。我々、ゴーストカンパニーは、誠心誠意、お客さまをダマさせていただくために、日夜努力、研究をしております。

我が社の事業内容は主に「詐欺行為」です。水道水をミネラルウォーターとして販売してみたり、特別な力があるといって、ただの布切れをお守りといって売ってみたり、電話口で「オレオレ」と言ってみたり……。え?芸がない?もちろん、今ご説明させていただいたのは、ほんの一例でございます。時には気分を変えて、電話口で「お前、お前」と言ってみたりもします。そうすると、お客さまは混乱されますよね?そこに付け込んで、一気にお客さまをダマすわけです。

え?別にオレはだまされたいわけじゃない?そんな詐欺会社に誰が仕事を頼むんだ、ですって?お客さまは、私がお客さまを訪ねるまで、一度でも詐欺に会ったことはありますか?ないでしょう。詐欺師にだまされる、というのは非常に貴重な経験なのです。もし、我が社に詐欺行為を依頼されて、騙されたら、お客さまは、面白い話の種を手に入れたことになるんですよ。「いやー、実は、詐欺師に詐欺行為を頼んだら、本当にだまされちゃってねー。あはははは」と。これはねぇ。宴会の時なんかにこの話をすると、そりゃあ、盛り上がりますよ。あ、そうそう、パンフレットもあるので、是非見てみてください。

見てください、このお客さまの声。

「始めはうさんくさい詐欺会社だなぁ、と思っていたんですよ。この詐欺会社は、もしかして詐欺会社じゃないんじゃないか、と。ただね、試しに仕事を依頼してみると、見事に私を騙してくれたんですよ。それはもう気持ちのいいくらいに。合計で60万円くらいですか?きっちりと騙されてしまいました」

「私も、貴重な体験ができるって聞いて、さっそく依頼しました。そしたら、『寝心地のいい特別な布団だ』っていって、訪問販売の方がいらっしゃったんです。あまりに素晴らしい営業トークだったんで、ちょっと高かったんですけど、買ってしまったんです。後で、見事に騙されたことに気づきましたね。あちゃーと思っていたら、なにか、最近怪しい会社に仕事を依頼しませんでしたか?って、弁護士の方が我が家にきたんですよ。で、『みんなでその会社を訴えよう!』って盛り上がって。その弁護士にお金を払ったんですけど、その後、ぱったり弁護士からの連絡が途絶えて。あっ、あれも詐欺か!って(笑」

どうですか?お、どうやら興味を持っていただけたようですね。「なんだか知らないけども、頼みたくなってきた?」ええ、ええ、我が社に依頼されるお客さまは皆さんそうおっしゃられるんですよ。では、こちらの契約書にサインを。あと、前払いとして五万円いただきます。えぇ、えぇ。もちろん、きっちりとあなたを騙して見せますよ。五万円がちっぽけな額だと思えるくらいにね。

──続いてのニュースです。都内に住む四十代の男性が、株式会社ゴーストカンパニーを訴えました。男性側は、依頼したのにゴーストカンパニーが私を騙さないと主張しており、これに対して、ゴーストカンパニー側は、「ほらみなさい。騙されたじゃないですか」とのコメントを発表しております。

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