小説シンガー

私の家にも、ちょっとしたカイダンがありましてね。あまりに急だから、犬が登れないんですよ。

怪談

信じてくれないかもしれないが、俺は昔、人間だったんだよ──と、洋式便所が俺に話しかけてきた。家で俺が大便をしているときの事だ。

びびったね。和式トイレでお化けが出てくるってのはよくある話だが、洋式便所で、トイレ自身が語りかけてくるっていうのは聞いたことがない。確かに、いわくつきの部屋なのでお安くしておきますよ、とはいわれたが、俺が想像していたのは、もっとちがう種類のいわくだ。しかも、俺は今まさに、きばっている最中なので、逃げることもできない。思わず爆笑してしまった。

おいおい、人がまじめな話をしている最中に笑いだすとは失礼な奴だな、とトイレは言った。「すまないが、ウンコをしている途中にまじめな話をされても困る」と返した。

いや、そりゃしょうがないよ。俺、トイレだもん。と言われ、さらに面白さが倍になる。笑い過ぎで腹が痛い。
「し、知らなかった。時代は進化していたんだな。和式便所で妖怪が出てくるという話はもう古い!時代の最先端は洋式便所でトイレ自身が話しかけてくるんだな!!」
と言うと、お前は嫌な奴だな、とトイレが言った。おまえなぁ、そんなこと言うと、ウンコ流さないぞ?と言われ、俺は笑いすぎの呼吸困難に陥った。

「し、ししししらなかった!昔の便所の妖怪は人間をトイレの中に引き込むって聞くが、今のトイレはウンコを流さないことで抵抗するんだな!!ぎゃははははははは……」

ちくしょう。人のこと笑いやがって。このクソ野郎!!と言われたので、もう息ができなくなった。
「くくくくくくく、クソを流すトイレが、ひとのことをクソ野郎って!!ひーっ!ひーっ!」

と笑っていたら、俺は死んだ。かなりあっけなく。いや、トイレの呪いとかそういうのじゃなく、笑い過ぎの呼吸困難による窒息死で。どうやら、いわくというのは、このトイレで原因不明の窒息死が後を立たないという話だそうだ。ウンコをしながら死んでいる死体を発見された俺は、現代の怪談の恐ろしさをまざまざと思い知った。

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