小説シンガー

しにたい。

レッツゴー天国!!

「共に死のう!」

そう言った彼の目は死後の世界への夢と希望に満ちていましたが、私は死後の世界に夢も希望もなかったので「結構です」と断った所、彼は私の返事が余りにショックで自殺した。お互いの希望が叶って結果オーライ、とか思ったけど彼の両親が私を逆恨みして父親がゴルフのクラブを、母親が包丁を持って押しかけてきた。

「貴様のせいでタカシは死んだんだ!」

落ち着け両親。まずタカシ君ですが元から死にたがっていました。

「嘘をつくな!タカシは自殺するような子じゃない!!」

そうなんです。タカシ君はそう言う人間では無いのは私も知っています。こう言うと言葉は変ですが、タカシ君は後ろ向きな理由で死のうとしてたんじゃないんです。むしろ前向きな理由で死にたがっていたんです。

「なんだその前向きな理由というのは!?」

彼はこう言っていました。『世界中の空と海と大地を冒険したけど、後一つ冒険していない所がある。そう、天国だ!!』。あの時のタカシ君の目は、まるで少年のようにキラキラと輝いていました──。

「た、確かにタカシにはそういう変わった所があるが、自ら死を選ぶほどバカじゃない!!……はずだ」

あれあれ。先ほどよりも勢いが無くなってきましたね。タカシ君のご両親ですから、タカシ君の並外れた行動力はご存知のはずです。彼はジャングルの中を裸で歩いていた所、裸族と友達になりましたし、第二次バルハナ戦争では自作の飛行機で戦闘機による空中戦を見学に行っていました。酸素ボンベなしで深海3000メートルに潜ったこともあったし、自作のロケットで月まで行ったこともありましたね。そうです。彼の行動力は異常なんです。そんな彼にホレて一緒に世界を旅してきた私も異常ですけどね。

──それに、ご両親が何の迷いもなく私を殺しにきたその行動力。やはりあなたたちは親子なんですね。

私がそう言うと、彼らは納得したのか泣きながら私に非礼を詫び、帰って行った。私もちょっとタカシの誘いを断ったのには後ろめたさがあったので、その後タカシの葬式に出て、線香をあげてたら「うおっしゃ、ただいまー!!」と言いながらタカシがお棺をぶち破って生き返った。

は?ちょっとあんた何生き返ってんの。普通死んだら生き返らないでしょ。っつーかあんたが死んだせいで私あんたの両親に殺されかけたんですけど。っつーかもう本当にバカじゃないの?バーカバーカって泣きながら言ったら「俺が旅に出て無事に帰ってこなかったことがあるか?」って言ったからホレ直した。

「やっぱりダメなんだ。お前と一緒じゃないと旅をしてても楽しくねぇぜ!!」

そう言いながらおどけてカッコをつける彼の唇に私はキスをした。

「それにな。今回は旅の始まりが悪かった。計算間違いだ。『自殺』じゃ地獄にしか行けねぇんだ。大抵の聖書にもそう書いてある。俺が行きたかったのは天国だ!ということでルカ。俺と一緒に殺されてくれ!」

結構です、と断ろうとする前に彼の父親が彼の脳天に、彼の母親が私の脳天にそれぞれコンクリートのカタマリを投げつけてるのが見えた。さすがタカシの両親。恐るべき行動力。一体どこでそのコンクリートを手に入れたんだろうとか考えてるうちにゴッとかいう鈍い嫌な音が耳の後ろから聞こえて意識が遠のいていく。

まぁいいや。彼と一緒なら私はどこまででも行ける。

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