小説シンガー

ビックリ箱の中にビックリする要素が無いという意味でビックリするビックリ箱を作りたい。

Boxes

母は言いました。
「今日はお弁当箱に夢を詰め込んでおいたからね」

と言うワケで、お昼のランチの時間になりお弁当を開けると、中から渋い40代くらいのおじさんが出てきました。

おじさんは言いました。
「お嬢ちゃん。俺も久しぶりに、いい夢を見させてもらったよ。お礼にこいつをあげておこう」

そう言っておじさんは玉手箱をくれました。
「中には愛が入っている。おっと、お嬢さんにはまだ早いかな。まぁ、ここぞという時に開けてくれ。さて、俺は旅を続けるぜ」

そう言っておじさんはどこかへ行ってしまいました。

仕方がないので、私がこっそり片思いしているクラスメートのケン君のそばで玉手箱を開けると、中からおばあさんが出てきました。

おばあさんは言いました。
「この世界に入ってもう60年。やっと、本当の愛って言うものが分かった気がするわ。お嬢ちゃん。ありがとうね。お礼にこれをあげるわ」

そう言っておばあさんは宝石箱をくれました。
「中には勇気が入っているわ。人生で困難に出会ったとき、開けてちょうだい」

そう言っておばあさんはどこかへ行ってしまいました。

仕方がないので、ケン君に告白する勇気をもらおうと宝石箱を開けると、中から子供が出てきました。

「やった!やったぞ!!僕はついにやったんだ!!おねえちゃん、ありがとう!!お礼にこれをあげるよ!!」

そう言って、子供はおもちゃ箱をくれました。
「中には、希望とガラクタが詰まってる。心が闇に沈みそうになったら使ってね」

そう言って子供は、バヒューンと飛行機のマネをしながらどこかへ走って行ってしまいました。

私は、ケン君に結局愛を告白できなくて、心が闇に沈んでいたので、おもちゃ箱を開けました。

その途端、悲鳴に近い声で友達のユカリが叫びました。
「サユちゃん、それ、パンドラの箱!!」

私は慌てておもちゃ箱を閉じようとしましたが、中からものすごい力で疫病、悲鳴、災難、悪魔、恐怖、闇などが飛び出しました。

私が箱を閉じたときには、中には希望しか残されていませんでした。

箱から出てきた悪魔が私に言いました。
「くっくっく。お嬢ちゃん。ありがとう。お陰で箱から出られたぜ。お礼に一つだけ願いをかなえてやる。サービスで今回は魂を頂く契約は無しにしといてやるぜ」

私は言いました。
「まだ今日は何も食べてないの。お弁当をちょうだい」

というわけで、悪魔さんから幕の内弁当を手に入れて、私は無事にランチを食べることができました。

授業が終わり、家に帰ると、母親が言いました。
「今日のお弁当はどうだった?」

私は言いました。
「なんだかんだで夢も愛も勇気も手に入れることができなかった。私に残ったのは希望だけ」

「あらら。まぁ、夢も愛も勇気もそう簡単に手に入れられるものじゃないからね」

「うん。あと、なんかパンドラの箱を開けちゃって、恐怖とか悲劇とか疫病とか出しちゃった。あーあー。結局、私みたいな一般人が努力せずに手に入れられるのは、叶うかどうか分からない希望と、幕の内弁当だけか……」

「ちょ、ちょっとそんなことより、パンドラの箱を開けたの!?出てきた数々の不幸はどうしたの!?」

「なに言ってんの?お母さん」

夢も愛も勇気も手に入らないこの世の中だけど、災厄なんてありふれたものは、箱を開ける前から掃いて捨てるほどあるじゃない。

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