小説シンガー

こういうワケの分からない作品を書き続けられれば良いなと思う。

欠落ジェネレーション

朝起きたらモノ凄いブサイクになっていたので大慌てで母に言ったら、「大丈夫。あなたは元からモノ凄いブサイクよ」と言われたのでホッとした。

いつも通り、母が作ってくれたトーストと目玉焼きを食べて学校へ行く。

通学途中に片目が無い女の子に出会ったので、驚いて「大丈夫!?あなた、右目が無いよ!?」と言ったら、「お姉ちゃんこそどうしたの!?目が二つもあるなんて、かっこ悪いと思わないの!?」と言われた。

女の子が言うには、今は個性の時代だから、できるだけ他人とは違う外見を持った方が良いそうだ。

右目はどうしたの?と聞くと、卵屋さんに売ったそうだ。そういえば今朝の目玉焼きは妙にグロテスクだと思ったけど、あれは他人の目玉だったのか。

学校に着くと、いつも通り体育の先生が包丁を持って追いかけてきた。足腰を鍛えるためには仕方がないそうだけど、先生のせいでもう50人くらい死んでる。でも、毎朝毎朝走って逃げるのもいい加減飽きてきていたので、道端にあった尖った石で先生の右目を突いた。

先生が泣きながら「何すんだよー。予想外だよー」と言うから、私の友達が二人もあなたに殺されたせいで今は私に友達が一人もいない事と、今は個性の時代だから目が一つくらい無くても大丈夫だという事を伝えると、先生は納得してくれたのか静かになった。

脈を測るとお亡くなりになっていたので、ちょっとやりすぎたと反省した。

教室に着くと皆にあたたかい拍手で迎えられた。どうやら体育の先生のことを皆嫌っていたらしい。無駄殺しにならなくて良かった。

一時間目は国語の授業だったはずだが、臨時の全校討論集会が開かれることになった。討論のテーマは、「悲劇!体育教師殺人事件。犯人は誰か!?」だった。

犯人とバレると面倒くさそうだったからこっそりやり過ごそうと思ったが、クラスメートに裏切られる。お前ら、今朝拍手で私を出迎えたじゃねぇか、と心の中で苦々しく思う。

私は、体育館の壇の上に上げさせられた。罵倒の声が、主に体育教師の愛人だった保健の先生から浴びせられる。「なぜ、あんなに優しい先生を殺したのか!?」「鬼!」「人殺し!」──。

その声に乗せられたのか、教師連中からも私に悪口が向けられる。
「ブサイクのくせにー」
いや、ブサイクは今回の議題に関係なくね?と思う。

そこで、私は訴えた。
「では、今まで体育教師に殺されてきた学校の生徒達のことはどう考えているんですか!?」

すると、保健の先生が言い返す。
「常日頃から足腰を鍛えていなかった方が悪い!!ブサイク!!」

いや、ブサイク関係なくね?

「では、私に反撃された体育の先生も、私の攻撃から逃げきれなかったという時点で、足腰を鍛えていなかったと言えませんか!?」

「生徒達は殺される前に事前に『足腰を鍛えるために、包丁をもって追いかける』と伝えられている。あなたの反撃は事前に知らされておらず、卑怯極まりない!!ブサイク!!」

だから、ブサイク関係なくね?

仕方なく、私は生徒達に訴えることにした。
「生徒諸君!!今の議論を聞いていたでしょうか!?我々の仲間は、ただ足腰が鍛えられていなかったというだけでムザムザと殺され、逆に、先生が一人殺されただけで、全校集会のような騒ぎを起こす!!こんな差別があっても良いのでしょうか!?いや、良いはずが無い!!」

そう言うと、生徒達からわっと拍手が起きた。
「そうだそうだ!!いいぞ!!ブサイク!もっと言え!!」
ブサイクはもういいだろ。

調子に乗って、私は弁を続けた。
「そもそも、大人たちは自分の価値観を子供に押し付け過ぎている!!刺青やピアスごときで、やれ風紀が乱れるだの、不良だのとうるさいことばかり!!時代は常に進化している!!君たちの中には、個性を求めて、指を全部切った者、足をこそぎ落とした者、目玉をくりぬいた者たちがいる!!そんな君たちを、両手両足のある教師が包丁を持って追いかけるなどとフェアでない事を持ちかける大人達こそが卑怯である!!君たちの表現は何モノにも縛られるべきではない!!君たちには、君たちの体を自由にする権利がある!!君たちこそ常識にとらわれない、次世代を担うモノたちだ!!」

生徒達から拍手喝采をいただき、私は手をふって応える。大体、今の時代に五体満足という恰好をしているのは時代遅れの大人達か、流行に鈍感な私みたいなオタク人間だけだ。

とか考え事をしていたら、保健の先生が叫んだ。

「じゃあ、何にも体を壊していないあんたは何なのよ!?次世代の若者の仲間のふりしてるけど、あんたはどこも個性的じゃない!あんたの腕も足も首も、全部切り落としてやる!!」

おいおい。それとこれとは話が違うだろ。大体、体の一部を傷つけるなんて痛そうなこと、私ができるわけないだろ!!いや、私が時代遅れなだけかもしれないけどさ!!と、ちょっとパニクったが、そういえば、私にだって個性があるじゃないか!!と思い出した。私は叫んだ。

「アイ アム ブサイク!!」

生徒達は、「いぇぇぇぇぇえいー!!」と歓声をあげてくれて、その後、皆で保健の先生を殺してくれた。

あーブサイクでよかった。

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