小説シンガー

お嬢さん、お待ちなさい。

クマさん

何か知らないけど、朝学校に行こうとしたら、裸のおじさんが全速力で追いかけてきたから必死で逃げた。

後ろから、おじさんの声が聞こえる。

「ちょっと待てやぁ!!ボケー!!」」

ドスの入った野太い声に、私は益々必死に逃げる。

「落し物言うてるやろが!!カスー!!」

落し物?もしかして、私が何か落としたのを、おじさんが拾ってくれたの?いや、でも、裸である意味が分からない。

いやいや、待てよ?私はふと、ある童謡を思い出した。

ある〜日♪もりのな〜か♪くまさ〜んに♪であ〜った♪──クマさんは確か、お嬢さんのハンカチを拾って届けてくれたのだ。クマといえば、下手すれば人間を文字通り食べてしまうかもしれないモンスター。しかし、お嬢さんは勇気を持って立ち止まり、ハンカチを受け取ったではないか。最後に、お嬢さんとクマさんは二人で踊ってめでたしめでたし。

今の私の現状も似たようなものだ。裸のおじさんといえば、どう考えても変態以外の何者でもない。変態といえば、下手すれば私のような可愛い女子高生をあっちの意味で食べてしまうかもしれないモンスター。どう考えても、立ち止まるのは勇気がいる。そもそも、なぜ裸なのか。もしかして、おじさんは変態ではなく、裸でなければならない理由があったのかもしれない。

例えば、朝、ひとっ風呂浴びているときに、ふと窓から私が落し物をしているのを発見!あわてて風呂場から飛び出して、私に届けようとしたが、私が逃げ出したので、仕方なく追っかけている……可能性はゼロではない。

私は、走りながら、おじさんの手に持っているものを確認した。白い布切れ。どこかで見たことのある図柄。間違いない。私のだ。

私は、立ち止まって振り返った。

おじさんは、私が立ち止まったのを確認して、にっこりと笑いながら、それを広げた。

私のパンツだった。昨日洗濯中に盗まれた奴だ。どう考えても犯人お前だろ。涙目になりながら、私は再び走り出した。

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