小説シンガー

先生、胸が苦しいんです……。これはもしかして、恋の病?「老衰ですね」

告白

「彼のことを考えると、胸が苦しいんです」と医者に言ったら、「それは恋の病だね」と言われました。

「恋……ですか?」
「そう。恋だ。君くらいの年頃の女の子にはよくあることだよ」

そうなんだ。これは恋の病なんだ。私は、家に変えると、ベッドの上に横たわり、頭の上から布団をかぶりました。

私が言う彼のこととは、タグチ先輩のことです。うきゃー!!と私は心の中で叫びました。ほきょー!!と私は心の中で叫びました。げっきょーん!!と私は心の中で叫びました。

心の中の叫び声を消そうとしても、なぜだか勝手に心が叫び出します。なぜなら、恋の病だから。恋の病を治すには……告白しかありません!!私は決意しました。明日、思い切って告白しよう!

次の日、私はタグチ先輩のロッカーに手紙を入れました。『放課後、体育館の裏で待っています』。告白をするのは体育館の裏が一番であると、何かのマンガで読んだのです。

今か今かと待っていると、タグチ先輩がやってきました。半開きの目。半開きの口。臭い息。ハゲかかった髪。これでもかとつぶれた鼻。高校生なのに、もはや、中年太りといった体型。常にマイナス思考で、学校一のいじめられっ子。それが、タグチ先輩です。私は、なぜこんな彼なんかに恋をしてしまったのでしょう。でも、人を恋するのに理由なんか無い、というのは、よく聞く話です。

「な、なに?こ、こんなところに呼び出して」

どもり声で、タグチ先輩が尋ねてきます。

「私、最近、先輩のことを考えると、胸が苦しいんです」

私がそう言うと、先輩の顔は見る見る真っ赤になりました。

「医者に言われました。それは、恋の病だって」

そういうと、タグチ先輩は「い、いや」とか、「で、でも」とか「うーん」などと独り言をブツブツ言った後、「い、今は付き合えないんだ。妹のお葬式がもうすぐあって、い、今はいろいろ忙しいんだ」と言いました。

そんなばかな!憧れの彼と付き合えないなんて!タグチ先輩の妹のお葬式の話を聞き、私はますます胸が苦しくなります。心臓のどくん、どくんと言う音が、耳のすぐ側で聞こえます。

「私は、いますぐ付き合いたいんです!」

「だ、だから、ダメだって」

「じゃあ、告白します!私があなたの妹さんに、『よく、あんなブッサイクなお兄ちゃんをもってて生きてられるね?私なら恥ずかしくて一緒に住めないな。死にたくならない?』って言った次の日に、妹さんは自殺したんです!」

何だか知らないけど、次の日にタグチ先輩も自殺しました。タグチ先輩の姿を見かけなくなると、私の胸の息苦しさもなくなりました。いま冷静に考えると、あれは恋の病じゃなく、ただの罪悪感でした。まっ、どーでもいいや。

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