妄想どおり。
全てのことを思い通りにすることができる男がいました。
男は仕事をすれば面白いほどに金を稼げることができたし、女性を口説けば面白いほどにもてることができたし、勉強すればノーベル賞を受賞することもできました。
男は、友人に、よくこう言って自慢しました。「俺に不可能という文字は無いね!この世のすべては思いのままだ!」
男は、芸能界に入ってお茶の間の人気者になり、後に「あれは第三次世界大戦だった」といわれる世界サイバー戦争でヒーローとして名を上げ、突如宇宙から飛来した宇宙人から人類を救い、いにしえの魔物からお姫様を救い出し、タイムスリップして青春時代を五度ほど経験した後、大統領になると同時に世界から退屈と怠惰を奪い取り、世界をエンターテイメントなエキサイトワールドにしてから、神様と飲み友達になるまでになりました。
酒場で神様は言いました。
「いやー。君は私が見た中で、もっとも偉大な男だよ。どうだい?何か一つ、特別に願い事をかなえてあげるけど?……おっと、君ほどの人間になると、願い事は全て自力で叶えられてしまうかな。はは……」
しかし、神様のその提案に、男はニヤリとして答えました。
「いやいや。実は一つだけ、どうしても叶えられない願い事があるんだ。俺はぜひともその願いを君に叶えてほしい。でも、それを願うと君はきっとこういうだろう。『それはできない』と」
男の言葉に、神様は怪訝な顔をして言いました。
「おいおい。言っておくが、私は神様だぞ?君はこの世の中で全てのことを思い通りにできるかもしれないが、私はこの世の全てのものを作り出せるんだ。時には奇跡だってね」
あぁ、そのとおりだ、と男は言いました。
「俺はもちろん、君にも不可能なことなんて存在しない。でも、不可能なことを可能にするためには、君は絶対に『その願いは叶えられない』と言わざるをえないんだ」
神様は、面白い、と言いました。
「じゃあ、ぜひ言ってみてくれ。君の願い事を」
男は言いました。
「俺の願いはこうだ。『この世の全ての出来事が、まったく俺の思い通りに行かない世界にしてくれ』」
神様は、しばらく押し黙った後、言いました。
「そりゃ無理だ。私が願い事を叶えると、『君の思い通りに』『君の思い通りに行かない世界』になってしまう」
男は、ははは、と笑って言いました。
「そのとおり。そして、君が断ると同時に、この願いは満たされた。『私が思い通りに』『思い通りに行かない世界にしたいにもかかわらず』『この世は私の思い通りの世界のままだ』」