文学ファイター

怖い……。

理不尽な恐怖

よく怖い話で、窓の外から覗いている血だらけの女とか、顔を洗ってふと鏡を見ると、自分の背後に見知らぬ男が立っているとかあるけど、冷静に考えると、もしこの世に理不尽な恐怖があるとするならば、それと同じくらいに理不尽な幸福も存在するはずだ。だって、可能性としては同じくらいだと思うんだよね。理不尽な恐怖と理不尽な幸福が現れる可能性って。

例えば、今私の部屋のカーテンが一部剥がれ落ちてるのよ。あのカーテンの上の、シャーッてやる部分の部品が一部壊れていてね。だから夜には、誰かが窓から私の部屋を覗きこむのに調度良い隙間があるわけ。恐怖が覗きこむのに調度良い隙間があるわけ。

確かに、顔面血だらけで、目玉が片方取れかかっている女が窓から私の部屋をのぞき込んでいる可能性が充分ある。でも、この可能性を考えるのであれば、グラビアアイドルがスカートあけっぴろげて窓をのぞき込んでいる可能性も充分に期待していいんじゃないだろうか。だって、そうしないと世界のバランスが取れないから。理不尽な幸福が私を襲うことを期待していいんじゃないか。

例えばあなたがトイレで踏ん張っていると、トイレの中から血だらけの手が出てきて、あなたを襲うのだ。あなたは恐怖で飛び上がるのだ。しかし、その手は言うのだ。
「すいません、誰かいますか?助けてください」
警察を呼び、トイレを取り壊すと、中から絶世の美女が現れるのだ。

あなたがなぜトイレの中に閉じ込められていたのか美女に問うと、彼女は言うのだ。
「だって私は箱入り娘だから」
理不尽だ。そして彼女は自分を助けてくれたあなたに好意を抱き、恋をし、愛をし、結婚をし、あなたと美女は幸せに暮らすのだ。

しかし、あなたは心の中に闇を持つのだ。箱入り娘って、箱に入れるように大事に育てられた娘、っていう意味で、実際に箱に入れるわけじゃない。っていうか、あそこは箱ですら無い。トイレじゃないか!!そしてあなたは、二人の子に恵まれ、美女と仲良く暮らし、幸福に包まれて人生を全うするのだ。理不尽だ。

例えばあなたが朝洗面所へ行き、いつものように顔を洗い、ふと洗い終わった後鏡を見ると、自分の背後に男が立ってているのを見つけるのだ。叫び声をあげて後ろを振り向くと、美少年があなたの顔を見つめ返すのだ。美少年はあなたに聞くのだ。「すみません、守山公民館ってどこですか?」あなたは守山公民館の場所を教えるのだ。彼は例を言うと、玄関へ向かわず、トイレへ直行するのだ。そして彼は言うのだ。「ここはどこだ?」

彼は極度な方向音痴なのだ。あなたは彼を守山公民館へ連れていくと、彼は感謝し、あなたに恋をするのだ。そして結婚し、出産し、あなたの子は皆極度な方向音痴なのだ。なんて理不尽な。そしてあなたは子供をジャニーズに入れ、夫と幸せな毎日を暮らし、時々行方不明になる夫をサポートし、最後は幸福に包まれて人生を全うするのだ。理不尽だ。

だから、私達は闇夜を極端に恐れるけど、それと同じくらいに闇夜に期待してもいいんじゃないか。血だらけの女が現れる恐怖と同じくらい、水着美女が現れることを期待してもいいんじゃないか。

もちろん、古井戸から髪の長い女があなたを呪い殺すために這い上がってくる可能性はある。でも、想像してごらん。古井戸から、48人のアイドルが這い上がってくるところを――なにこれ怖い。

多分、古井戸という狭い中で女が48人も閉じ込められたら、皆お互いに凄い非難しあうと思うんだよね。「○○のせいで閉じ込められた!」とか「違う、▲▲が悪い!」とか「仕方無いじゃん」とか「死ね」とか。そんな女のドロドロした部分が現れると思うんだよね。だって48人が古井戸に閉じ込められたんだぜ?そして、罵り合いながら、泣きながら、金切り声をあげながら、協力し、それはもう必死の形相で皆で古井戸を脱出するのだ。そういう背景も考えて怖い。

だから、小さい子は闇夜が怖いと思うけど、闇夜に生首が飛んでいるのと同じくらいに、アンパンマンが飛んでいることを期待していいと思うんだ。

しかし、考えてみれば世の中は「理不尽な恐怖」と「理不尽な幸福」だけだろうか。「理不尽な普通」というのもあるんじゃなかろうか。

例えば私が夜部屋で本を読んでいて、ふと窓を見ると、カーテンの隙間から血だらけの女がスカートをあけっぴろげながら私の部屋をのぞき込んでいるのだ。なんて「理不尽な普通」なんだ!!プラスマイナスゼロじゃないか!私は恐怖のあまり、彼女のスカートの中を凝視するのだ。そう、恐怖のあまり……!!

だから、このサイトを見てる女の子で、もし今後幽霊になっちゃうことがあって、ふと「せっかく幽霊になったから、ガルニモのサイト運営してる人の顔を見に行こう」って思ったら、基本的にはスカートをあけっぴろげて現れてね。お兄さんとの約束だぞ。

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