文学ファイター

「自殺願望があるんですが……」「あー。その考えはきっと遺伝ですね。あなたの家系は先祖代々死にたがってます」

高度な知能は自分の遺伝子の要・不要を判断する

今の時代に生きている全ての人間は、選りすぐりの遺伝子を持った精鋭です。

700万年前に人類の祖先が誕生し、その後、人類は数々の危機に直面しました。戦争、飢饉、病気、自然災害――その過程で、数多くの人間の血筋が途絶えました。

その700万年間の生存競争を全て耐え抜いた遺伝子を持つのが、今を生きるあなたです。

あなたはヒトラーよりも優れた遺伝子を持つ人間です。ヒトラーは後世に自身の遺伝子を残すことができませんでした。所詮その程度の人間でした。

あなたはキリストよりも優れた遺伝子を持つ人間です。キリストは後世に自身の遺伝子を伝えることができませんでした。人間としてはその程度でした。

人間が生きる意味は、世界を制覇することでもなく、神となることでもなく、後世に遺伝子を残すことです。

人間は遺伝子を後世に残すために生まれて、死ぬのです。

人間の三大欲、『睡眠欲』『食欲』『性欲』は全て遺伝子を残すためのものです。

精子や卵子の生成には、人間が思っている以上の膨大なエネルギーを必要とします。そのためのエネルギーの生成が睡眠欲と食欲なのです。性欲は言うまでもなく遺伝子を残すための行為です。

人間は――そして、あらゆる生命体は全て生きることを欲します。なぜなら、より長く生きることこそ、より自分の遺伝子を後世に残すチャンスが多くなることを意味するからです。

つまり、自ら「死にたい」と思うことは、ありえないこと、異常な事です。

全ての動物の中で、自殺する生き物は人間だけだそうです。

では、なぜ人間は「死にたい」と思うのでしょうか?

自殺には様々な理由が考えられます。『いじめ』『離婚』『暴力』『お金』『人間関係』『ただなんとなく』――。

これらは全て、生きていく上での障害です。これらの障害を乗り越えられない程度の軟弱な遺伝子を持つ人間の場合、遺伝子自身はきっと「あ。俺のデータ、この世界を生きていくのに向いていないわ。劣等遺伝子だわ。『人間』という種を保存するのに不要だわ。消えとこう」と思うのです。

『この世で人間しか自殺する動物がいない』ということは、極度に高度化された知能は遺伝子自身の要・不要を理解し、自ら「死にたい」と思うわけです。

人生の難敵に「死ねよ」と笑いながらケチョンケチョンにされた人間は、最後に自身の遺伝子に『死ね』と言われて、死ぬのです。

ですが、冷静に考えると「死にたい」と思っている人の遺伝子は少なくとも今、この現代に生き延びるほどは優秀だったのです。ヒトラーよりも、キリストよりも優れた遺伝子を持っているのです。

「死にたい」と思っている人の中には、きっとめちゃくちゃダメで、生きる価値の無い人間もたくさんいるのでしょう。親と子がそうそう性格が違うとも思いませんので、きっとその人の親も生きる価値が無い程度の性格の持ち主なのでしょう。

そして、その親もダメ人間で、その親もどうしようもなく、さらに先祖に遡れば、ダメ人間の血筋が脈々と受け継がれてきたのが分かるのでしょう。

でも、そのダメ人間であるあなたの血筋は、700万年もの間、戦争、飢饉、病気、自然災害、全てを生き延びてあなたの所まで遺伝子を伝えました。

どうせあなたのご先祖さま達ですから、いじめられたり、妻と離婚したり、暴力をふるわれて鼻の骨を折ったり、逆に暴力をふるって刑務所に入れられたり、友達出来ずにひとりぼっちでいつも後ろの方にいたり、な方々ばかりでしょう。

そして、ご先祖さまのうちの何人かは「死にてぇなぁ……」としょっちゅう思ったことでしょう。

そういった、遺伝子が絶えるという危機を何度も乗り越えた今、あなたが生まれたのです。

今、死にたいと思っている人は、きっと人生のあらゆる局面で負けつづけた人でしょう。

日常という名の戦争に負けて、あなたは今遺伝子に「死ね」と言われている。

人間の脳みそは優秀なので、遺伝子の命令を聞き、素直に「死にたい」と思っている。

でも、人生のあらゆる戦いに負けつづけたあなたが、恐らく最強の敵である自身の遺伝子の「死ね」という命令にあらがってはいけない理由はどこにもありません。

後世に遺伝子を残して遺伝子との戦いに勝てとは言いませんが、「死にてぇなぁ……」と思いながらも、少なくともあなたの所まで遺伝子を残したご先祖さまのためにも、せめて最後の戦いくらいは立派に戦って「死を選択しない」という引き分けくらいに持っていけないものでしょうか?

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