文学ファイター

「お客様。今夜は最高のサービスをお楽しみください」
「断る。低品質なサービスを頼む」

質の悪い国に住みたい

日本は質の良い国です。仕事の質も高品質です。

でも、最近働き出して気づきました。今まで、お客さんの立場だったから良かったものの、働く立場になったら、俺が質の良い仕事をしないといけないのか。

正直、自分はそこまで出来た人間じゃないんです。適当に生きていきたいんです。完璧な仕事なんて無理です。

挨拶くらいはさすがの私もできます。元気良くおはようございます。そうです。何事も気持ちが大事です。

お茶だしは無理です。何ですか?粗相の無いお茶の出し方って。いやいや、不快に思われないようなある程度の形式があるのは分かるんです。でも、出来ないんです。不器用だから。形式を覚えられない。頭で理解できても体が動かない。形式よりも気持ちが大事じゃないですか?でも、分かっています。お客さんを思う気持ちがあればこそ、形式を覚えなさいと言われることは。

文章を書くことは好きです。小学生のころは国語が得意科目でした。でも、この年になると尊敬語とか謙譲語とか、使い方を忘れています。どれが尊敬語でどれが謙譲語かが分からないのではなく「この言葉は敬語でどう言うんだ?」ということから既に忘れています。ごめんなさい。本を読むのは好きなんですが、実はコミュニケーション能力には自信が無いんです。国語が得意と会話が得意はイコールじゃ無いんです。

電話ですか?えぇ、そりゃまぁ、どきっとはしますが、取れることは取れます。でも、実は私、子供のころ中耳炎をしていまして、実は耳が少し遠いんです。えぇ、隠しています。言ったら何かが変わるんですか?そのうえ、相手がどのような方か分からないんです。お客様や、取引相手の方なら、なんとか頑張って不快になられないよう努力は出来ます。営業の電話って何の罠ですか?営業の方は電話をしないでください。お願いです。迷惑です。えぇ、あなたが仕事だと言うのは分かるんです。でも、電話は止めてください。私は常に必死なんです。お客様にサービスを提供したい心構えなのであって、いきなり「サービスを提供しますよ」と言われても、心構えがなっていないんです。私に決定権ないし。私がお客様なら、お客様の立場から命令します。電話してくんな。

4月に入社したばかりだけど、これから段々と仕事を覚えていくに当たって、きっと質の高い仕事を色々と要求されるのでしょう。目上の方とのやりとり、他社の方とのやりとり、お客様とのやりとり。

私には、これら全てに対して質の高い仕事を行う自信がありません。

しかも、職場が都会です。質の低い仕事をしていると、すぐに淘汰されるのでしょう。なぜなら周りは質の高い仕事をしている会社ばかりですから。

日本は、お客様でいる限りは幸せな国です。でも、仕事をしだすと、途端にその大変さが分かります。

頭の中では分かっているんです。尊敬語や謙譲語、礼儀作法。これらは全て、相手を不快にさせないための技術。最初は気持ちだけでも良いから、少しずつ、出来ることからやってごらん。

でも、違うんです。正直私、お客さんとタメ口で話したい。取引先とタメ口で話したい。会社の上司とタメ口で話したい。せめて「マジですか?」は言わせてほしい。いや、むしろ挨拶も「ちわー」でいいだろ。だって、お互い堅苦しいじゃないですか。

あぁ、町の駄菓子屋で近所の子供に駄菓子を売って暮らしたい。子供というお客様を相手に「ゴムゴムのピストル!」とか叫んでみたい。

田舎に帰って、適当な仕事に就くんだ。質の低い仕事でも許される田舎に帰るんだ。そして、お客さんに「豚、怖いっすよねー。見ました?レベル5っすよ?」ってタメ口で話すんだ。お客さんとしても寛大な気持ちになるんだ。質の低い仕事をされても、「まぁ、お互いさまだよね」みたいな感じになりたいんだ。

分かっています。日本という土地面積の小さな国で、それほど多くない人口で、それでも世界と渡り合っていくには、人間その物のレベルを上げなければならなかったということは。

おそらく、人間レベルの平均を取れば、日本はかなり高得点でしょう。でもね、最近日本でうつ病が流行ってるじゃないですか。それはきっと、自身のキャパシティ以上の人間レベルになっちゃってるからじゃないですか?

分かっています。私も分かっているんです。人間レベルが低いよりは、人間レベルが高い国の方が良いってことは。でもね。もっと適当に暮らそうよ。適当に生きていこうよ。そこまで高品質じゃなくてもいいじゃない。

もっとぐーたらな国に生まれて適当な人生を送りたかったわー。

このエントリーをはてなブックマークに追加